35歳、二児の母です。初めて出産したのは28歳、次に出産したのは31歳のときのことでした。一人目を出産したとき、陣痛促進剤を投与したせいか、陣痛が大変強かったのがトラウマでした。また、赤ちゃん3,300グラムと大きめで、なかなか出てきてくれなかったことも恐怖でした。あやうく帝王切開になるところでした。
二人目を出産する際、そのトラウマを乗り越えるため、産院がすすめる「ソフロロジー出産」を実践してみることにしました。ソフロロジー分娩とは、イメージトレーニングによって心身をリラックスさせて、出産の恐怖や痛みを軽減させることを目的とした方法です。無痛分娩などで使用される麻酔などは使用せず、意識を上向きに変えることで出産を楽にします。実際の方法としては、瞑想のイメージトレーニングができるCDを聞きながら指示通り呼吸方法を学ぶことです。
産院の講習にも参加しました。講習で流れた分娩VTRでは、実際にソフロロジー分娩法で出産している様を観ることができました。一人目を泣き先びながら出産した私にとっては、「嘘でしょ」と疑いたくなるほど穏やかな出産の様子が映されていました。ママは「ふーっ」と深い呼吸を何度も繰り返すだけで、表情を苦悶にゆがませることもなく、産声が上がります。私はこの穏やかな出産をぜひ自分もやりたい、と心に強く決めました。
とはいっても、特に厳しいトレーニングははなく、瞑想と呼吸法のイメージトレーニングの繰り返しです。初めての出産のときは、呼吸法さえわからず何度も酸欠になりかけましたが、二度目の出産では、このイメージトレーニングのおかげか陣痛の痛みをそれなりに逃すことができたと思います。陣痛が始まった頃、ソフロロジーの呼吸法で痛みをやり過ごせたことで、後々の身体のダメージがかなり改善されたのでは、と感じています。
自宅でのトレーニングで困ったことです。ソフロロジー分娩法のCDを聞くときは、静かな状況で瞑想しなければなりません。ですが、すでに二歳児を育てていたため、なかなかその時間が取れませんでした。上の子が昼寝をするとき、夜寝るとき、一緒に横になって、子どもが寝入ってからトレーニングするようにしていましたが、うち半分くらいは、一緒に寝落ちしまっていました。朝起きると、イヤホンが耳に入ったまま、ということが多々ありました。言い訳かもしれませんが、ソフロロジーのCDも穏やかな曲と優し気な声が流れていて、いかにも眠気を誘うのです。後から振り返り、これでは駄目だよね、と反省しました。すでに一人目の育児をされているかたは、ためには主人や両親に子どもを預けて、ひとりでトレーニングの時間を作れるよう協力してもらいましょう。
出産の日、自宅で継続的な陣痛が続いていたので産院に連絡して向かいました。市内に産婦人科がないので、車で一時間程かかる産院に主人に送ってもらいます。通うのは検診のときからで慣れていたのですが、ここで予想外の出来事が。行く途中、上の子を私の実家に預けようとしたのですがクズって離れてくれない!そのとき上の子は二歳で、まだろくにおしゃべりもできませんでしたが、子どもなりに何かを予感したようです。ここでかなりの時間をロスしてしまいました。
産院に着くころには予想外に陣痛が強くなっていて、子宮口も5センチ開いていて、すぐに入院となりました。せっかくソフロロジー分娩法を望んでいたのに、そのときすでに落ち着いて呼吸法ができる状態ではなかったのです。加えて、経産婦だったせいか、かなり早く子宮口が開いてきてしまい、あまりの痛みに、途中から無痛分娩に変更してもらいました。せっかくソフロロジー分娩のイメージトレーニングを行ったのは何のためだったのか……。もちろん赤ちゃんに出逢えた喜びは感動的で素晴らしかったですし唯一無二のものでしたが、結局無痛分娩で出産してしまった自分が情けなくなりました。
出産の痛みや恐怖が強いかたは、無痛分娩を最初から検討されるのもひとつの手段だと思います。また、ソフロロジー分娩で出産されたいかたは、出産当日に余裕をもって産院に入れるかを考慮しておいたほうが良いかもしれません。陣痛が強くなってからでは、せっかくのイメトレも台無しになってしまう恐れがあります。
ただし、私の痛がる状態をみてすぐに、無痛分娩を提案して、切り替えてくれた病院の先生の判断や手際には非常に満足しています。また、出産のときは精神的に普通の状態ではありませんので、担当する看護師さんなどのちょっとした言葉で傷ついてしまうこともあります。(私は「ソフロロジー分娩なのだから、痛がってばかりいないで呼吸に集中して!」と怒られたのがショックでした。)こうした経験があるかた、不安があるかたは、あらかじめ主治医の先生に伝えておくと良いかもしれません。